今月のすこやか通信 vol.003

からだをいたわる温泉のお話。
あなたは疲れを感じた時や体調が優れない時、何をしたいと思いますか?

はじめに
「あなたは疲れを感じた時や体調が優れない時、何をしたいと思いますか?」
そんな質問をしますと「温泉でゆっくりしたい」「家でくつろぎたい」と考える人が目立ちます。
私たち日本人には、やっぱり「温泉=身体が癒される」と考える人が多いようです。
日本は世界でも有数の温泉国であり、現在約2,500あまりの源泉が発見されています。
日本人と温泉との関わりは、今から7,000年前の縄文時代から始まった。といわれております。
まさに我々のご先祖さんは、神代の昔から温泉に入っていたことになり、著書によると、神功皇后が韓国遠征の傷病兵を嬉野(うれしの)温泉で療養させたという記録も残っているみたいです。
秋は紅葉、そしてゆっくりと身体をいたわる「温泉」について今月はお話しましょう。

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体に優しい温泉の効果(三養)
療養(病気の治療目的)の方は、特に自分に合う温泉を探すことが大切です。
温泉には「適応症」(効果が期待できる症状)、「禁忌症」(悪化させる恐れのある症状)が明記されていますので、ちゃんと確認しましょう。
自然に囲まれ、木々の香りやその地の風などを感じながらのんびりと、自分流の温泉をお楽しみください。

■ こんなに体に優しい温泉の効果(三養)
温泉と言うと、日本人の中には、「お湯に入って、お酒を飲んで騒いで帰るもの」と考えている人もいます。
確かに健康人がのんびり温泉に入って、お酒を飲んだり騒いだりすることはストレスの解消になりますが、温泉の良さはそれだけではありません。
温泉の利用は、疲労回復させる「休養」、健康維持し病気を予防する「保養」、病気治療を目的とした「療養」 に分類されます。
そして、これが温泉の「三養」と呼ばれています。
私たち日本人の多くは入浴により「のんびり休養」し心身ともに癒されています。

しかしヨーロッパなどの海外では、「治療の目的」と考える人が多く、ほとんどの温泉で飲泉(温泉水を飲む)が行われています。
温泉のお湯には、薬理効果のある特殊成分が含まれており、皮膚や呼吸器の粘膜から体内に入り、血管を拡張したり、利尿効果を高めたり、ホルモンの作用を促したりする。
例えば、硫黄には解毒作用や皮膚を滑らかにする働きがありますし、鉄は貧血に効果があります。
飲泉では、消化器の粘膜からも吸収され、内臓や脳などに作用してその機能を調節します。
各成分の化学的な効果を知り、改善したい症状によって、最もふさわしい温泉を選べば理想的。
また、さまざまな成分が微量ずつ含まれている温泉は、それぞれの薬理効果が相乗的に作用して体の調子を整えてくれるという良さもあります。

■ そこで”自然治癒力を高める”温泉の相乗効果について考えて見ましょう。
温泉のお湯には、特殊な成分による薬理効果の他にもう1つ、温泉の重要な科学的効果として見落とせないものがあります。
それが「総合的生体調節作用」と呼ばれるものです。
かいつまむと、私たちの体は不規則な生活を繰り返したり、過剰なストレスが続くと、少しずつ体のリズムが崩れ、病気を引き起こし易くなります。
そんな状態の時、温泉地で気持ちの良い自然環境と適度の入浴によって体にやさしい環境でリフレッシュを繰り返せば、不規則な生活で失われた身体のリズムを回復させることができます。
つまり、温泉による特定な効き目があるだけではなく、正常な状態に身体を整えていくという作用もあります。

■ すこやかな身体へと導く温泉の効用。

◇温熱作用
「朝のシャワーは熱く、疲れた日の夜のお風呂はぬるめでゆっくり」などと言われていますが熱いお湯は身体を目覚めさせ、ぬるいお湯は神経を休息させます。
このような「温熱効果」は自律神経によるものです。
自律神経は2種類の回路を持ち、1つは身体の活動に都合の良い状態に持っていく交感神経。
もう1つは、身体を休息状態に導く副交感神経。
例えば予期せぬ状態に陥った時、脳の自律神経の中枢は私たち自身が無意識のうちに「敵ダ!全員配置ニ付ケ、攻撃準備!」という指令を素早く出し、アドレナリンというホルモンが分泌されます。
そして交感神経を通り、身体の各部へ一斉に送られます。
心臓はバクバク血圧は高まり呼吸はハァハァ、目はランランと輝き、戦闘体制完了。
その反対に静かな部屋で穏やかに過ごしている時は、脳が「休メ!」の命令を出しアセチルコリンが分泌され、副交感神経を伝わって体の各部を休息モードへと変えていきます。
熱いお湯の刺激は、体温を上昇させると同時に脳に「活動開始」の判断を、体温に近いぬるめのお湯は「休息OK!」のサインを出させます。
その結果、身体を元気にさせたり、神経疲労を取り除いたりします。
しかし42℃以上の熱めのお湯で全身入浴すると血液の粘度が上昇(いわゆる脱水症状)し水分不足のため脳血栓ができやすくなりますので、浴後の水分補給は必要です。
また、「あがり湯」として最後にシャワーを浴びてしまう人や、丁寧にタオルで身体を拭いている人をよく見かけます。
温泉はいろいろな物質がイオンの形で溶け込んでいて、これらの物質が身体の表面に付いて保温効果を高めています。
肌に付いた薬効成分は、3時間程度は効果が持続しているので、刺激の強い温泉や肌の弱い人以外はシャワーで洗い流したりせず、サッと拭く程度のほうが効果的です。
また湯上り後の身体は思った以上に疲れています。
血圧が安定するまでには2~3時間かかるので、少なくとも30分以上は横になってゆっくり休みたいものです。
その時にも水分補給は充分にしてください。

◇高温の効果
熱による刺激効果、覚醒効果が得られ交感神経が優位になるため、心拍数増加、血管収縮血圧上昇が起こり、精神的緊張が高まります。温熱によって末梢神経が改善し、手足の麻痺に効果があります。

◇低温の効果(体温に近い温度)
鎮静効果、自律神経の正常化作用があり、副交感神経が優位になるため心拍数減少、血管緊張低下、血圧低下が起こり、精神的にリラックスします。

◇水圧の効果
温泉入浴すると、お湯のなかでは水圧に身体が押され、天然のマッサージとでも言うべき状態になります。
登山やスキー、ゴルフなどの後、近くの温泉に入ると疲れが取れるのは、水圧を受けて全身が圧迫されるため、マッサージを受けたときと同じ効果が得られます。
下半身の血管やリンパ管が圧迫され、血管が押し上げられ、体をめぐる血流が増える事で組織に溜まっている老廃物や疲労物質などが排泄されるので疲労が取れます。
しかしその反面、水圧で皮膚表面の血管などが圧迫されて血液がたくさん心臓に戻ってくるため心臓にかかる負担も大きくなります。
また横隔膜が押し上げられて肺の容量が少なくなるので、これを補うために呼吸数が増加します。健康な人は、それが心地よい刺激となりますが、体力の弱い人や高齢者は、心臓や肺に過大な負担がかかってしまいますから注意しましょう。
上手な入浴法として、浴槽に入る前は「かけ湯」を十分に行い、つま先から腹部へ、指先から腕、そして胸という具合に、身体の末端から上のほうに順にお湯をかけていき、徐々に身体をお湯の温度にならしていくのがコツです。
また、半身浴はお湯が浅い分だけ水圧が低いので、心肺への負担が少なくなるので、全身浴よりも半身浴をお勧めします。

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◇浮力の効果
温泉は真水より比重が高く、浮力を受けて体重が軽くなります。
浮力で身体が軽くなるお湯の中では、地上に比べて身体を動かすのがずっと楽になりますから、肥満・腰痛・関節痛などの人は、特に「浮力」の効果を実感するでしょう。

健康ライター 望月 ゆき子

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